節約は、力なり。
人は三千円の使い方で人生が決まるよ、と祖母は言った。
原田ひ香『三千円の使いかた』の冒頭のこの一行を読んだとき、私はカウンターパンチをくらった。
「人生が決まるってどういう意味?」
「言葉どおりの意味だよ。三千円くらいの少額のお金で買うもの、選ぶもの、三千円ですることが結局、人生を形作っていく、ということ」
孫の御厨(みくりや)美帆と、祖母のやりとりは続く。
もう、同意!御意!!と、ぐいっと本の中に引き込まれた。
この『三千円の使いかた』というタイトルは、その意味は、こういうことだったのか〜と目からウロコ。
いろんな御厨家のショートストーリーが連なる本著は、また最後にぐるっと一周して、見事に完結する。
御厨家を通して、いろんな人のちょっとした幸せを描き、最後には大きな幸せ、人生観につながる。
その幸せのエッセンスに、家計のやりくりがしっかり存在するのだ。
そう。使うも自由。使わざるも自由。
私たちは自由を任されていて、人生を任されている。
でも三千円というディティールの積み重ねの先に、人生があるとしたら、いがいと身近で、楽しい。
一冊を読み終え、仲の良い友達と語り合った後のような感動を覚える。
さて、私の三千円は、どのように使おうか。